この事例における間欠動作は以下のような目的で利用しました。

1.モータのオーバーラン対策
2.左右に取り付ける部品の同期ずれの対策

いずれも精度に関するもので、モータ制御、部品精度、組立精度を上げれば解決する問題です。
しかし、精度向上に時間を要したり、高い精度の部品製作等、コストアップに繋がることがしばしば起こります。
そこで、一見無駄に見える間欠動作機構を取り入れて対処しました。

関連する開発テーマは「スライドルーバー ver.2」です。

このテーマでは、大小2台の試作品を作りました。
1つは、プロト試作の位置付けとしてのミニチュア模型。販売促進サンプルとしても利用します。
もう1つは展示会出品用の実機サイズです。

右の動画はミニチュア模型です。
たたんだスラットを所定位置に配置した後、一斉回転します。

間欠動作機構は回転動作の機構として利用しました。


説明図(1) 【図1】のように、スラットの一斉回転は、黄色で描かれた長尺部品を
平行四辺形の4節リンクで動かすだけです。
リンクの回転中心にモータからの回転を直接つないで、閉止と開放の
位置にセンサーを配置すれば済みそうな構造です。

しかし、閉止と開放の位置よりもオーバーランが起こると、構造の
いたるところにストレスがかかります。

物体の移動には慣性力がついています。
また、センサーの位置検出にも誤差があります。
さらに、今回使用したモータは安価なDCモータで、尚且つ、マイクロ
スイッチで電源をON-OFFするだけの簡単な回路での制御です。
この条件で停止位置の精度を要求するのは難しい状況です。

位置決め制御の精度が高いモータを使用して、物体の慣性力を考慮
しながら制御回路でデバッグを繰り返すという手段もありますが、そ
の作業には専門のエンジニアの力が必要です。
つまり、開発の時間とコストが大幅に膨らむことになります。

そこで、モータのオーバーランがあっても閉止と開放の位置が一定に
保たれるような構造として間欠動作機構を盛り込みました


 
左のフラッシュムービーでその構造をご覧下さい。

ギヤードモーター(図では省略)に直結された部品(主動側)が回転して、従動側の部品を回転させます。
このとき、互いの動作は、リニアな関係ではありません。
主動側の部品で若干のオーバーランが発生しても、閉止、開放の位置は一定になります。

回転機構は左右で一組になっています。
左右の同期にずれがないことが理想ですが、現実には誤差がつきものです。

この間欠動作機構は、若干の同期ずれも吸収します。


このように、間欠動作機構は動作のタイミング合わせ以外にも、位置決めの手段として利用できます。



このページでの説明はミニチュア模型を例にとりましたが、展示会に出品した実機サイズの試作でも
同じような構造を利用しました。